2011年12月18日日曜日
灯篭坂大師
この日は、竹岡ラーメンで朝食をとり内房探索を開始する予定でしたが、お店が休みだったため、朝食なしで灯篭坂大師(千葉県富津市)にやってきました。あまり有名な場所ではなく期待していなかったので、軽くお参りをしてから朝食を摂る予定でしたが期待以上に満喫してしまいます。
縁起によると灯篭坂大師は弘法大師空海を本尊としてお祀りしているそうです。弘法大師といえば西の人であるにもかかわらず全国にゆかりの地がある有名なお坊さん。
なんでこんなところに弘法大師かというと、弘仁11年(820年)に日光に行く途中でこの地をお通りになり岩に自画像を刻んでいったのだそうです。大師が去った後にこの地の人々は大師の徳を慕い大師像を礼拝し帰依するようになりました。なんで灯篭坂なのかというと、この山の上なので常夜灯を点じ大師の御灯明として海上安全及び大漁を願ってきたからなのだそうです。
国道127号を下っていくと、いくつものトンネルを通ることになるのですが、その中のひとつ城山隧道の手前に妙に目立つ参道入り口の門があります。 ちなみに門には「弘法大師霊場 金華山 東善寺」とあり、昭和59年4月に建設会社から奉納されたものとなっています。 以前から気になっていた、この門の奥を進みます。
参道入り口の門を進んでも、すぐにお寺は現れず、まずはトンネルのお出迎え。千葉の名物手堀トンネル!車が1台通れる程度の幅ですが堀り跡の風化具合も良い雰囲気で残っていました。
さらに、地図を見ると分かるように、このトンネルの下は内房線のトンネルが通っており、トンネルの立体交差になっている珍しい場所です。
このトンネルを抜けると交差点になっており、参道の標識がないため、どちらに向かって良いのか分からなくなってしまいます。
ただ、ここで誰でも足を向けてしまう光景となります。ちなみに直進が参道ではないことは行った人であれば分かるようになっています。
ひとつ目のトンネルを抜けた交差点は周囲を木で囲われていて薄暗いのですが、右手に誰もが目を奪われるであろうトンネルが現れます。こちらも千葉の名物である手堀のトンネルでありますが、他の場所では絶対に出会うことのできない姿に圧倒されてしまいます。
まずは豪快な手堀トンネルの高さに驚かされます。幅は車1台分程度なのですが、トンネルの高さは車の高さをはるかに越える高さがあり二階建てバスが通ってもまだ余裕があるほどです。高さを計測することは出来ませんでしたが、10m以上はありそうでした。
頭上注意の看板がありますが、上を見ずにはいられません。
一体何が通ることを想定してこの高さになったのでしょうか?
もう一つこのトンネルで印象的なのがトンネル前後の切り通し、これがなければただの背の高いトンネルですが、、前後に切り通しがあるおかげでさらに高さ感が増しています。垂直な壁に囲まれて進んで行くと手堀の壁が不安感をかきたてます。トンネル部は以外と短くて、全て切り通しにせず少しだけトンネル部を残したのが不思議です。
通常であれば、全て切り通しにするかトンネルにするのでしょうが、中途半端に残ったトンネルと切り通しの複合が不思議感を出すのに役立っています。
堀り跡の残る垂直な切り通しは芸術的であり、中にいると時間が経つのを忘れてしまいます。
通り抜けた逆側ですが、こちらもトンネル前に長い切り通しがあり高さ感抜群です。
トンネルを含めたこの道は、国道127号と平行して通っています。同じようなルートで何本もトンネルを掘る必要もないので、国道127号の城山隧道が出来る前はこちらの道を通っていたのかもしれません。このトンネルの名前は分かりませんでしたが、旧城山隧道とでもいうのでしょうか?
トンネルの形は構造的に有利な円形が一般的ですが、ここではトンネルの常識も関係ないようです。
トンネルの中も全て手堀りのまま地肌むき出しであるため削った跡が残っていて感動的です。陽が差し込んでいるので蛍光灯がなくても真っ暗ではなさそうですが一本の蛍光灯がトンネルを照らしているのは、手堀りの跡を通る人に魅せるためでしょうか?トンネルの中も切り通し部も手堀りの跡がしっかり残っていて通る者を飽きさせません。
現国道127号のルートがこの旧城山隧道のままであったら、この場所に新トンネルが作られてしまい切り通しトンネルはなくなっていたことでしょう。今、このトンネルを堪能できるのも現国道のルート決定者のおかげです。
感動的なトンネルを抜けると目に入るのがこの建物、となりにトイレもあり休憩小屋の類でしょうか?ただこういう場所に必ずある自動販売機もありません。ここで休むつもりであれば飲み物を持参する必要があります。
休憩小屋の向かいには新しめの鳥居があり「灯篭坂大師」となっています。国道127号わきにある参道入り口からここまで案内はありませんでしたが、素晴らしいトンネルにつられて到着する仕組みになっているようです。
しかし、お寺なのに鳥居?未だに神仏習合の名残りが残っている珍しいお寺のようです。ちなみにGoogleMapにはかなり小さな寺社も載っているのですが、灯篭坂大師(東善寺)は載っていません。なにか事情があるのでしょうか?
※縮尺を変えると「灯篭坂大師」で表示されます。
ここから階段を登ると本堂?がありますが、中は巨大な岩肌をバックに弘法大師と思われる像が安置されていました。これが弘法大師が自画像を刻んだ岩?
今回は誰もおらず詳しいことは分かりませんでしたが、堂内も綺麗になっており花も新しく、階段途中にある奉納ノボリの奉納日が1ヵ月前のものがありました。地元の方が参拝されているのでしょうか?今でも現役のお寺のようです。
お堂の裏手に道がさらに続いているので探索してみました。舗装されていない道ですが、岩の部分は削られて階段になっています。
写真右上方向に登ると道が二手に分かれていて、山を下る道とお堂の裏手に登り海のほうに向かう道があります。灯篭坂の由来である灯台の跡でもあればと思い登る道をしばらく進みましたが、ヤブがすごくなってしまい進むのを断念しました。この道はおそらく海まで続いているはずです。途中、旧城山隧道の上も通っているはずですが、残念なことに、この道からトンネルを見下ろせる場所はありませんでした。旧城山隧道を全て切り通しにしてしまうと、この道が寸断されてしまうのでトンネル部分を残してあるのかもしれません。
ちなみにここから下る道は旧城山隧道が出来る前の道だったのかもしれません。
灯篭坂大師から木更津方面に下る道か灯篭坂大師参道階段のどちらかが灯篭坂なのでしょう。参道階段に灯篭がならんでいるので参道が灯篭坂ですかね?
木更津方面に下る道は時間がかかりそうなので、今回はパスしましたが、城山越えの道は、灯篭坂大師の前を通る山越えの道→旧城山隧道→城山隧道(現国道127号)と推移してきたのではないでしょうか?
妙な形の参道入り口から始まり、豪快な切り通しとトンネル界の異端児の組み合わせである旧城山隧道、お寺なのに鳥居があったりと見どころ満載である灯篭坂大師。
これほどまでに来た人を魅了する場所であるにもかかわらず、地図にその名称は記載されておらず、観光ガイドにも当然載っていません。当然公式サイトなんてものもありません。他所者がここに来るのは国道127号沿いの参道入り口に興味を持った人くらいでしょうか。
旧城山隧道を通る道は灯篭坂大師の先で行き止まりとなってしまうため、このトンネルを通る人は灯篭坂大師へお参りにくる人だけでしょう。限定された人が通るためだけの道のため、昔ながらの姿を今まで残すことが出来たのかもしれません。
朝食を摂る前に軽くお参りの予定でしたが、予想外に見どころが多く空腹であることも忘れて満喫してしまいました。
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